2023.8.29

等級制度とは?3つの主要なタイプを徹底解説

企業・組織のHRを幅広く支援している澤上です。今回は、人事制度の中でも根幹となる「等級制度」について詳しく解説します。等級制度は、組織における報酬を決定する上での拠り所となるものです。グレードと呼ぶこともあり、G5などと数字と組み合わせて表現している企業が多く見られます。

等級制度にはさまざまな形が存在しますが、その中でも特に一般的な3つのタイプを取り上げます。それぞれの特性や適用するべき状況、その効果や注意点など、深く掘り下げてご紹介します。

それぞれの組織やその環境に最適な等級制度を選ぶことで、従業員のモチベーション向上や組織のパフォーマンス向上を促進することが可能です。これから解説する等級制度の各タイプが、皆様の組織運営に役立つ一助となれば幸いです。それでは、詳しい解説を始めていきましょう。

等級制度とは?

等級制度は、企業や組織が従業員の職務内容や能力、責任の大きさなどを評価し、それに応じて職位や給与を決定するための基本的な枠組みです。この制度を通じて、組織全体の人事計画を立案し、従業員一人ひとりのキャリアパスを明確にすることができます。従業員はキャリアパスが示されることで自身のキャリアデザインを行う機会となりますし、組織はマネジメントとメンバーの役割が明確になることで整合性のある業務を行うことが可能になります。

評価の基準

等級制度における評価基準は、主に従業員の業務内容、能力、職務遂行に必要なスキルや経験、そしてその業務に対する責任の大きさ等が考慮されます。また、組織の目標や経営戦略に沿って、その評価基準は定期的に見直され、更新されることが一般的です。

等級制度の目的

等級制度の主な目的は、職位や給与の決定、キャリアパスの明確化、公正な評価体系の構築の3つです。これらを適切に管理することで、組織は従業員のパフォーマンスを最大化し、組織の目標達成に向けた推進力を生むことができます。

次に、等級制度のメリットとデメリットを整理します。

等級制度のメリット

等級制度が採用される理由は、その多くのメリットがあるからです。組織にとっても従業員にとっても、等級制度は多くの利点をもたらします。

公正性と透明性の向上

等級制度は、従業員一人ひとりが自身の職位と報酬がどのように決定されているかを理解するための透明性を提供します。評価基準が明確であり、それに基づいて給与や昇進が決定されるため、従業員は自分のキャリアパスに対する明確なビジョンを持つことができます。これにより、公正性が保証され、従業員の満足度とモチベーションが向上します。

パフォーマンス管理の精度向上

等級制度は組織のパフォーマンス管理にも役立ちます。従業員が目指すべき目標や役割が明確になるため、個々のパフォーマンス向上やチーム全体の生産性向上に寄与します。また、マネジメントにとっては誰にどのようなレベルの業務にアサインするかの判断が行いやすくなるためメンバーとのコミュニケーションの質を高めるメリットもあります。

キャリア開発と成功計画の促進

等級制度は、従業員のキャリア開発と組織の人材計画にも寄与します。キャリアパスを明示することで、従業員は自身のキャリア目標に向けてスキルを磨く動機付けが生まれます。また、組織は、優秀な人材の確保や育成、そして後継者計画を効果的に行うことができます。

これらのメリットを最大限に活用するためには、組織の目標、業務内容、従業員の能力に応じた適切な等級制度の選択と適用が重要となります。

次節では、等級制度のデメリットの考察をご紹介します。

等級制度のデメリット

等級制度がもたらすメリットは多いですが、同時に課題やデメリットも存在します。組織が等級制度を適切に活用し、その効果を最大化するためには、これらのデメリットを理解し、適切に対処することが重要です。

柔軟性の欠如

等級制度は一定の枠組みを設けるため、必然的に柔軟性が制限される場合があります。特に急速に変化する業界や、新たなスキルや役割が頻繁に生まれる環境では、制度がその変化に対応できない場合があります。そのため、等級制度を継続的に見直し、必要に応じて更新することが求められます。

過度な競争を生む可能性

等級制度は、報酬や昇進のための競争を助長することがあります。これは一部の従業員にはモチベーションを向上させるかもしれませんが、他方では過度のプレッシャーや職場内の対立を引き起こす可能性もあります。競争はある程度必要ですが、組織内の協力関係やチームワークを損なうほどにはならないよう、等級要件を定義する際や評価制度での補正など適度なバランスが求められます。

等級制度のメリット・デメリットについてさらに詳しく解説した記事もぜひご参照ください。

等級制度のメリット・デメリットを徹底解説

等級制度の3つのタイプ

人事制度のコアは等級制度、賃金制度、評価制度の3つから構成されています。中でも等級制度は賃金制度や評価制度の前提となる位置付けであり、人事制度を設計する際の最も根幹となる部分になります。等級制度とは、「企業が従業員の給与を決める上での格付けを、数字やアルファベットなどで表したもの」です。それらが「どのようなモノサシで設計されるか」によってその分類が変わり、能力・職務・役割などによって区分・序列化されるのが一般的です。
代表的なものとして以下3つがあります。

  • 職務等級制度
  • 職能等級制度
  • 役割等級制度

モノサシの1 「仕事」 職務等級制度

政策的な後押しもあり、昨今よく目にすることの多いジョブ型職務(仕事)をモノサシとして等級を定義するものです。日本ではこれを元々は「職務等級制度」と呼んできました。以前は外資系企業に多く見られたもので、グローバルで共通のモノサシを用いながら職務価値を測定します。

会社ビジョンを実現する上で必要となる組織(仕事)のアカウンタビリティ(説明責任・義務)を基に、その価値をいくつかの観点から評価していき、その総合点によってポジション毎の等級が定められることが多いです。年功的な考え方はなく、あくまでも仕事の価値によって等級は変動するためアサイメントが重要になります。

モノサシの2 「能力」 職能等級制度

日本では従来から等級制度のモノサシが人に着目される傾向があり、ケイパビリティ(能力)の観点から等級を定義することが試みられてきました。これが「職能資格制度」と呼ばれ、ケイパビリティ(能力)の中でもマインド(意欲)を重視するのかスキル(技能)を重視するのかなどで等級の定義が微妙に異なってきます。

一般的に年功型の人事制度で利用されるものであり、近年はメンバーシップ型と呼ばれる人事制度の企業で多くみられます。比較的キャリア形成段階までは明確に差をつけやすいものの、一定レベル以上になるとスキル面だけでは差をつけにくいため詳細な定義が難しくなる傾向が見られます。新卒採用を重視し、時間をかけて育てていく企業に向いた制度と言えます。

モノサシの3 「役割」 役割等級制度

マインドやスキルは在籍年数によって変動する面があり、必然的に年功序列になりやすいという弊害が語られるようになりました。それを受け日本でも成果主義やコンピテンシーがトレンドとなり、一部では職務等級制度の検討も進みましたが、運用が難しいとの理解が広まったところもあり、より運用しやすい「役割等級制度」の検討が進んできました。

キャリアやの段階やレポートラインに応じて等級数が決まり、等級毎に求められる役割を定義したものです。複線型でマネジメントとプロフェッショナルで記述を区分し、さらには職種毎に定義する企業も見られます。但し、この役割の記述については各社各様の記述方法をとっており、曖昧さが残ったまま運用している企業も見られます。

オススメの等級制度は?

仕事基準で等級を変動させるのであれば、その仕事に最も向いている人材を配置していくことになります。年齢、年次、新卒か中途かも関係なく同様に処遇していくことになります。

能力基準で等級を変動させるのであれば、能力を測定することが必要になります。一定の能力を身につけたことを評価した上で処遇していくことになり、一度昇格させたら降格させることは難しくなります。

役割基準で等級を変動させるのであれば、職務型と同様にその役割に最も向いている人材を配置していくことになります。ただし、等級数が大括りになるケースが多く、細かな等級の調整が難しいため給与テーブルの設計で微調整しながら処遇することになります。

上記のようにそれぞれの等級制度によって特徴があり、企業のカルチャーに合う制度がどのようなものなのかをよく見極めることをお勧めします。

等級制度についてのよくある質問

等級制度の導入や運用については、多くの疑問が寄せられます。以下に、よくある質問とその回答をまとめてみました。

Q1: 小規模な企業でも等級制度は必要ですか?

小規模な組織でも、従業員に対して給与がどのように決まるのかをしっかりと説明することを重視しているのであれば等級制度は有用です。小規模な企業の中でも経営者が一人ひとりと交渉し、個別に給与額を決めていく場合には経営者がそのロジックが整理できているのであれば不要かもしれません。但し、経営者一人でのマネジメントが限界に来る前に検討することをおすすめします。経営者とメンバーの間にマネージャを置き、権限委譲を進めながら組織をスケールさせる上では等級制度は必要になってきます。

Q2: 等級制度の運用で最も難しい点は何ですか?

等級制度の運用で最も難しい点は、公正性と透明性を維持しながら、柔軟に組織の変化に対応することです。具体的な成果だけでなく、協力性やリーダーシップなどの主観的な要素を公正に評価するのは困難です。また、業界の変化や新たな役割の出現に対応するためには、定期的な制度の見直しが必要となります。

Q3: 等級制度と評価制度の違いはどのような点ですか?

等級制度での評価は各等級毎に定義した指標から見た際にどの等級に該当するのかを判断するためのものです。このため等級毎に定義された指標から見て適切なレベルで目標設定が行われているのかはとても大切な点になります。メンバーシップ型の人事制度ではこの点をふわっとさせている企業が多く、評価を行う以前に目標レベルが本人やマネージャの裁量で整合しないままになっているケースが見られます。評価制度が有効に機能するかどうかは設計した等級制度を正しく運用できているのかどうか次第とも言えます。

Q4: 等級制度を導入するときの注意点は何ですか?

等級制度を導入する際の注意点は、以下の3つがあります。1つ目は、制度設計が組織の目的と一致していること、2つ目は制度が公正で透明であること、そして3つ目は従業員の理解と受け入れを得るためのコミュニケーションを確実に行うことです。これらを保証するためには、制度の設計、運用、評価を継続的に見直し、改善する必要があります。

人事・報酬・等級制度設計と運用を助けるクラウドツール「hitofusa」

等級制度の設計と運用は、組織の成長と発展を支える重要な要素です。しかし、この記事で既に触れてきたように、それは複雑なプロセスであり、透明性、公正性、フィードバックの提供、定期的な見直しなど、多くの課題が伴います。

ここで、私たちが提供するクラウドツール「hitofusa」の登場です。このツールは、あなたの組織の人事・報酬・等級制度設計と運用を円滑にし、上記の課題を解決するのに役立ちます。

透明性の確保

「hitofusa」は、組織内の等級制度や報酬制度の透明性を確保します。評価基準や報酬体系がすべてのスタッフに明確に伝わるよう、一元管理と可視化を可能にします。

公正性の確保

公正性を担保するための評価基準設定機能も「hitofusa」には備わっています。各職務に対するスキルや成果を公正に評価し、それを等級と報酬に反映するプロセスをサポートします。

フィードバックの提供

また、「hitofusa」は従業員のパフォーマンス管理とフィードバックのプロセスもサポートします。評価結果に基づくフィードバックを直接提供し、従業員の成長とスキルアップを支援します。

定期的な見直し

さらに、組織や業界の変化に対応するための定期的な見直し機能も「hitofusa」は備えています。これにより、あなたの組織は常に適切な等級制度と報酬制度を保つことができます。制度の見直しで発生する人件費の変動もシミュレーションを行うこともできます。

以上のように、「hitofusa」はあなたの組織の人事・報酬・等級制度設計と運用を一手に引き受け、円滑に進めることを可能にします。さらに良い組織運営と成長を目指すあなたの大切なパートナーとなることでしょう。

関連記事

LOADING...

©altrust Corporation.